[タイ] 外国人バイヤーはシティのコンドミニアムにこだわる

2018/08/20

外国人バイヤーはシティのコンドミニアムにこだわる


高い頭金と高い投資リターンにより転売は少なめ

比較的高めの頭金と、母国と比べると魅力的なキャピタルゲインや利回りにより、外国人がバイヤーがバンコクのコンドミニアムを手放すことはあまりないだろうと、不動産アナリスト、デベロッパーや専門家たちは見ています。

アジア・プラス・セキュリティーズ社のリサーチ部門の執行副社長、テルサック・タウィーティーラタム氏は、外国人客向けに販売されたコンドの引き渡しに関する懸念は、オフプラン*プロジェクトのほとんどでかなり高い頭金が課されているのもあって、最小限だろうと言います。

「それよりも心配しなくてはいけないのは、タイ人投機家です。というのも、オフプランプロジェクトは通常タイ人バイヤーからはユニット価格の5~10パーセントの頭金しかとっていないからです。一方で、外国人からは30%もの頭金を回収しています。」とテルサック氏は言います。

タイ証券取引所に上場するデベロッパー、スパライ社のマネージングダイレクター、トリテチャー・タンマティタム氏は、オフプランプロジェクトのコンドを予約する外国人からは、タイ人バイヤーよりも高い頭金を徴収していると言います。

「頭金を高くしてけば、リスクを最小限にすることができます。」とトリテチャー氏は言います。「頭金支払が高いので、プロジェクトの建設完了の際に、ユニットの引き渡しを拒むバイヤーはあまりいません。」

スパライは、オフプランのコンドについて、ユニット価格の25~30%を外国人バイヤーから回収するのに対して、タイ人バイヤーからは15~20%としています。

タイ人バイヤーにとって、頭金とは分割払いの一環で、建設期間に合わせて一定期間毎月支払いがされます。外国人にとって、頭金とは予約日に一括して支払うもので、これはそのほうが便利だからです。残金は引き渡し期間に支払われることになります。

スパライは、スクンビットソイ117付近の新しいコンドプロジェクトに関して、今年初めに海外の販売代理店からアプローチがあったのを受け、過去二か月間このようなルールを適用してきました。

不動産コンサルタント会社、コリヤーズ・インターナショナル・タイランドのリサーチ部門のシニアマネジャー、パッタラチャイ・タウィーウォン氏は、バンコクでコンドミニアムを購入する外国人のほとんどが投資目的のバイヤーだと言います。

「バンコクのコンドは、海外からのバイヤー、特に香港人とシンガポール人にとって、ますます人気となるでしょう。というのも、彼らの国々では、不動産購入に対して投資過熱抑制策が取られているからです。」

こういった状況は、新しいバイヤーの興味をそれらの国々からバンコクに移させるだけでなく、すでにバンコクのコンドに投資をしている外国人バイヤーたちを引き留めることにもなると、パッタラチャイ氏は言います。

プーケットやパタヤといった、外国人に人気の観光地においても、多くのコンドプロジェクトにおいて販売可能面積の49%という外国人比率はいっぱいです。外国人が転売しようとする場合、いつでもそれを買いたいという別の外国人がいるのです。

「プーケットとパタヤでは、デベロッパーの中には、そのコンドプロジェクトの外国人比率がいっぱいの場合、外国人には販売できない残りのタイ人比率51%分を、長期リースホールドとして外国人に売り出しているものもあります。」とパッタラチャイ氏は言います。「フリーホールドの販売とくらべると、それほどの価値はないかもしれませんが、タイ人バイヤーの市場が弱いため、デベロッパーはそうするしかないのです。」

金融コンサルタントのUBSによると、昨年以来、中国本土のバイヤーは、日本および東南アジア、特にタイとベトナムに目を向けているといいます。

主な理由としては、中国の一帯一路**構想の認知度があがり、これがもたらした多大なインフラ投資と、それによる魅力的な価格設定があります。

旗艦となる東部経済回廊***は、企業・個人向けの税優遇措置もあって、外国人の専門家や研究者を引き付け、それがまた外国人の不動産購入につながるとみられています。

また、タイは2017年には3,540万人もの観光客を迎え、中国人観光客に至っては、過去五年で400%の増加となっており、外国人がセカンドハウスとして住宅を購入する例も増えているとUBSは述べています。

サンシリが先行者利益を得た一方で、APタイランドは外国人バイヤーの関心を現金化することに焦点をあてています。これらのデベロッパー2社との対話の中で、UBSは外国人向け先行販売が2018年も上昇傾向だと話しています。

サンシリによると、外国人向け先行販売は2018年の最初の4か月で31億バーツに達し、前年同期とくらべて11%増、通年では130億バーツとみられています。

サンシリはまた、バイヤーの80%が香港と中国本土からのバイヤーだといいます。希望価格は、平米あたり160,000~170,000バーツ(約53万円~56万円)程度となっています。

APの思い描いている画も同じで、外国人バイヤーの関心の高さを考慮しています。APのアソークーラーマIXエリアにおける新しいコンドプロジェクトは、2017年第4四半期に始動し、すでに30%が外国人に販売済み、ほとんどが中国人だといいます。

外国人向けの販売比率は、2016年の平均10%から大きく上昇しています。APのプロジェクトでの平均販売価格は、平米あたり130,000バーツ(約43万円)、ユニットでは400万バーツ(約1,334万円)となっています。

APのコンドビジネスグループ長、ウィッタカーン・チャンダウィモン氏によると、APは昨年外国人客向けのコンド先行販売で970億バーツ(約3,234億円)を記録、2015年の8,000万バーツ(約2億6,670万円)から大きく伸ばしています。

「バンコクのコンドが外国人投資家に人気なのは、彼らの祖国と比べて、コンドのキャピタルゲインが高いからです。」とウィッタカーン氏は言います。「香港では、不動産投資による年間利回りは最高でも2.5%、それに比べてバンコクだと5~6%になります。」

APの子会社である不動産代理店、バンコクシティスマートによると、中国人バイヤーに人気のロケーションにある、新築の中級~ハイエンドのコンドの平均価格は上昇を続けているといいます。

2018年第1四半期で、中国人に一番人気のアソーク~ラーマIX~ラチャダーピセーエリアの新築コンドの平均価格は、2013年の126,915バーツ/平米(約42万円)から185,000バーツ/平米(約62万円)と、なんと46%も上昇しています。

この地域のコンドの販売率も高く、過去5年間で販売された14プロジェクトのうち90%が完売です。

ウィッタカーン氏は、APは、2018年の最初の7か月で外国人バイヤーから先行販売で40億バーツ(約133億円)を獲得、同期間の先行販売合計209億8,000万バーツ(約700億円)のうちの20%を占めると言います。

APは、2018年目標の335億バーツ(約1,117億円)の先行販売のうち外国人からの先行販売で100億バーツ(約333億円)を獲得したいとしています。

プルクサー・リアル・エステートのプレミアムビジネス部門チーフエグゼクティブ、プラサート・テドゥラヤサティット氏は、同社は、昨年のコンド先行販売において、中国人バイヤー関連で60億バーツを上げたと言います。今年、同社は、フエイ・クワンエリアの10億バーツ相当のコンドユニットを中国人に引き渡し予定です。

「昨年完成して中国人バイヤーに引き渡されたコンドについては問題なしとみられています」とプラサート氏は言います。「しかし、今日は、中国からの送金に問題がありそうです。」

トンタイ・グループのCFOかつ共同創設者であり、中国語での不動産ウェブサイトとタイにおける旅行マガジンを提供する、ティエンサック・タムチャロンキート氏は、中国人は、多額の頭金を支払っておいてバンコクのコンドユニットを見捨てることはしない、と言います。

ティエンサック氏は、「以前は、完成し引き渡し予定のコンドユニットを転売することができずに、予約したバンコクのコンドユニットを見捨てる中国人バイヤーもいました。これは、頭金がタイ人と同じ比率の5~10%しか回収されていなかったからです。」と説明します。


ティエンサック氏によると、これらのバイヤーは、プロではない代理店からアドバイスを受けて、投資用の予算を分割して、少ない頭金でいくつかのユニットを予約していたのだといいます。

不動産コンサルタント、ナイト・フランク・チャータード・タイランドのマネージングダイレクター、パノム・カンチャナティエムタオ氏は、タイにコンドを購入する本土の中国人の中には、昨年発表された、中国の厳しくなった資本規制の影響を受ける者もいるだろうと言っています。

これらのバイヤーは本土から送金する別の手立てをなんとか見つけるでしょうから、この影響は次第に薄れるでしょう。

「中国人はとても賢い投資家です。」とパノム氏は言います。「彼らは、コンドユニットを購入するために、あの手この手で送金する方法を探し出します。」

※地図は大体のイメージです


▼中国人バイヤーの問い合わせトップ15か国(2017年vs2016年)
タイは2016年の6位から上昇して、2017年には米国、オーストラリアについて3位につけています。

(出所:Bangkok Post

*オフプラン:完成物件を見ないままに物件を購入すること

**一路一帯:「一帯」とは、中国西部から中央アジアを経由してヨーロッパへと続く「シルクロード経済ベルト」を指す。また、「一路」とは中国沿岸部から東南アジア、スリランカ、アラビア半島の沿岸部、アフリカ東岸を結ぶ「21世紀海上シルクロード」を指す。一帯一路とは、今後、数十年かけて、これらの地域に道路や港湾、発電所、パイプライン、通信設備などインフラ投資を皮切りとして、金融、製造、電子商取引、貿易、テクノロジーなど各種アウトバウンド投資を積極的に進め、当該経済圏における産業活性化および高度化を図っていくプログラムのことである。 (出所:ビジネス+IT

***東部経済回廊:バンコクの東部に位置するチョンブリ県、 チャチュンサオ県、ラヨン県の3県を構成する地域のこと。タイ政府の長期開発ビジョンであるタイランド4.0の中心的なプロジェクトのひとつが、この東部経済回廊の開発である。(出所:日本総研