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海外不動産の相続の手続きは?順番や確認ポイントを専門家が解説

PropertyAccess Team |

監修:海外不動産税務の専門家 大木宣幸
(公認会計士・税理士・宅地建物取引士)
International CPA Firms・大木国際会計事務所 代表


「海外不動産を購入したいけれど、相続ってどうなるの?」
「親が海外不動産を持っているけど、手続きの順番で気を付けることは?」


海外不動産の購入を検討されている方も、すでに購入された方も、またご家族が海外不動産をお持ちの方も、相続は気になるところですよね。

この記事では、海外不動産の相続について、手続きの順番や相続税の対象となる資産を専門家が解説します。

最後まで読むことで、海外不動産を相続する際に気を付けるべきポイントを、相続が実際に発生する前に知ることができます。

いざという時に備え、相続発生後の不安を軽減し、適切な対応をとるための参考にしてください。



海外不動産の相続が発生するケース


相続する財産が海外にある場合、相続関係者が海外にいる場合など、国境をまたぐ相続のことを「国際相続」といいます。

不動産についていえば、以下のような場合が該当します。

・被相続人が海外不動産を持っている
・被相続人または相続人が外国に住んでいる

今回は特に、日本に住む日本人が海外不動産を相続する場合に焦点を当てて国際相続の手続きの順番を見ていきましょう。



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海外不動産の相続に必要な8つの手続き

被相続人が日本国籍の場合は、原則として日本の法律に基づき、相続の手続きを行います。

日本における相続は、
法の適用に関する通則法(通則法)第36条で、「相続は、被相続人の本国法による」と規定されているからです。

本国法とは、その人が国籍を有する国の法律をいいます。

ただし、日本の法律の他に、現地の法律も適用される場合があります。

このあと8つの手順に分けて順番に解説しますので、ひとつずつ確認していきましょう。



手順1.遺言書の確認

相続人はまず、故人が遺言書を残しているかどうかを確認します。


遺言書あり・・・
遺言に従って相続手続き   
遺言書なし・・・ 法定相続や遺産分割協議を適用   


日本における国際相続は、法の適用に関する通則法(通則法)第37条で「遺言の成立及び効力は、その成立の当時における遺言者の本国法による」と規定されています。

したがって、日本の法律で定める方式にて日本国内で作成された遺言書は、基本的に日本の相続手続きにおいてのみ有効です。

また、
遺言の方式の準拠法に関する法律 第2条では、以下の要件を満たすと遺言が有効になるとされています。

・遺言が作成された国の法律上の要件
・被相続人が遺言の成立または死亡の当時の国籍、住所、常居所の国の法律上の要件
・海外不動産の所在地の国の法律上の要件

海外不動産の相続をスムーズに進めるためにも、遺言書の有無と要件をしっかりと確認することが必要です。


手順2.現地の相続法の確認

相続には原則として日本の法律が適用されます。

しかし不動産については、不動産が所在する国の法律(所在地法)が適用されるのが国際的な原則です(不動産法準拠地の原則)。


したがって、相続する不動産がある国の法律も確認しなくてはいけません。


不動産所在地の国の法律によっては、所在地の国の法律が適用されたり、外国人による相続に制限があったりする場合もあります。

海外不動産を相続する際は、その国の法律に従って、相続人や相続の範囲を確認し、手続きを進める必要があると覚えておきましょう。



また、アメリカやイギリス等、英米法系の国(英語が公用語として使われている国)に不動産がある場合、プロベート(検認裁判)が必要になります。

プロベートとは、裁判所の監督下で行われる清算手続きです。

英米法系の国では、遺産承継について管理清算主義をとっています。

管理清算主義では、被相続人の財産を一度まとめて、裁判所などが統一的に管理・清算し、債権者への支払いや相続人への分配を行います。

遺言の有無に関わらず、裁判所の監督下で行われるプロベートを経て、残った財産のみが相続人に分配される仕組みです。


一方で、日本は包括承継主義です。

包括承継主義では、相続人は、被相続人の資産・負債を「全体として受け継ぐ」という考え方で、相続財産は直接相続人に承継されます。


しかし、日本での遺産分割協議や、遺産分割調停・審判、遺言書の効力が、そのままプロベートで現地の裁判所により承認されるとは限りません。

プロベートでは、現地の裁判所が関与しながら、遺言書の有効性の確認、遺産にかかる債権債務の確定・清算、相続人の確定・遺産の分配を行います。

プロベートは、通常で10カ月から1年、場合によっては2〜3年かかる場合もあります。

期間中は不動産の名義変更や売却などができないので、注意が必要です。




手順3.相続税の申告

海外不動産を相続した場合、特定の場合を除いて、日本で相続税を支払う必要があります。

日本において海外資産に相続税が課税されるかどうかは、相続関係者の「居住地や海外居住期間」が重要な要素です。

ご自身が相続人となる場合、日本における課税の有無を以下のチャートにまとめました。



被相続人・相続人の両方が10年を超えて外国に住んでいるならば、海外にある財産に関しては、日本における相続税の申告・納付は不要です。

日本国内にある財産のみが、日本の相続税の対象になります。

また、遺産の総額から「基礎控除」と呼ばれる控除額を差し引いた金額がマイナスの場合も、申告は不要です。

基礎控除については、以下の記事で詳しく説明しています。

海外不動産の相続税|評価のしくみは?専門家がわかりやすく解説


海外不動産の相続では、日本だけでなく、不動産が所在する国でも相続税の支払い義務が生じる場合があります。

海外において相続税が発生する場合、申告や納税の期限が日本と同じとは限りません。

期限通りに正しく納税するためには、現地の事情に明るい専門家に相談するのが良いでしょう。



手順4. 必要書類の準備

相続税の確認が取れたら、必要書類の準備を進めます。

通常の日本での相続の場合、以下のような書類が必要です。

・故人の死亡証明書(原本または認証された写し)
・被相続人や相続人の戸籍謄本
・被相続人や相続人の住民票
・相続人の印鑑証明書
・遺言書(もしあれば)、または遺産分割協議書
・不動産の権利証書や登記簿謄本、測量図、固定資産税の課税明細
・各種財産の残高証明書 
・葬儀費用の領収書など


加えて、海外不動産がある場合、主に以下のものが日本の相続税申告で必要になります。

・プロベートの資料(Letters of Administrationなど相続内容がわかる資料)
・海外不動産の鑑定評価書や評価証明書
(通常、海外では土地建物が一体で評価されるため、分けて評価するよう依頼しましょう)
・海外不動産の現地の不動産登記簿や証書など
・海外不動産所在地国での相続税申告書(相続税の制度がある国の場合)

日本で必要な書類の詳細は、
国税庁ホームページでも確認できます。



手順5. 海外不動産の名義変更


海外不動産を相続人の名義に変更するには、英米法系の国の場合、前述の裁判所での相続手続きであるプロベートを得た上で、現地の不動産登記所で相続手続きを行います。

名義変更の際には、故人の死亡証明書、相続証明書、遺言書(必要な場合)などが求められることがあります。

さらに、日本での死亡証明書、戸籍や住民票も現地裁判所に提出が必要です。

ただ提出するだけではなく、当該文書を英語に翻訳し、日本の公証人役場、法務局、外務省の証明、提出先の国の駐日大使館(領事館)による証明を受ける必要があります。(※1)  

※1  ハーグ条約締結国の間では、駐日大使館の証明は不要になることがあります。


また、日本での遺産分割協議や遺言が、現地の法的要件を満たしているとは限らないため、裁判所のプロベートでそのまま承認されるとは限りません。

実際の名義書き換えの際は、様々な書類の提出を要求されます。

その都度、現地の提出機関や弁護士などの専門家に問い合わせるなどして、対応していく必要があることを覚えておきましょう。



手順6. 相続税の支払い


日本国内および不動産が所在する国で必要な相続税を支払います。

海外不動産の相続税については、二重課税を避けるために、各国間の租税条約を確認することも重要です。

この際に、日本側で外国税額控除のしくみを利用することもできます。

外国税額控除については、以下の記事で詳しく説明しています。

海外不動産の外国税額控除は可能? 5つのポイントを専門家が徹底解説



手順7. 不動産の管理


名義変更が完了した後、海外不動産の管理や運営について検討します。

物件を売却する、賃貸する、もしくは自分で使用するなど、管理方法を決めることになります。

現地で信頼のおける不動産会社を探しておくと安心です。



手順8. 必要に応じて現地の弁護士や税理士の相談

海外不動産の相続は国や地域によって異なるため、個々の状況に応じて、現地の法律や税務に精通した弁護士や税理士との連携が必要です。

複雑な手続きが多いため、専門家のサポートを受けることをお勧めします。



手順1から8までお伝えしたように、海外での相続手続きは、要する手間や時間・海外での弁護士費用など、負担も大きくなるのが通常です。


筆者の私見ですが、海外不動産は、適切な不動産を選べば現地の物価上昇と共に不動産金額も上昇し、日本不動産には無い大きなキャピタルゲインを得られるのが魅力です。


ですが、これまで記載したように、海外不動産を保有したまま相続を迎えると、複雑な相続手続きが必要になります。

そのため、生前の相続対策をしておくことをお勧めします。

例えば、

・専門家と相談の上、海外不動産に関しては、その国のルールに従った遺言書を作成する
・一定の時期に海外不動産を売却する
共有名義(ジョイント)にする

などがあげられます。


海外不動産の相続が身近に起こり得るのであれば、日頃から家族間で話し合う機会をつくり、いざという時に備えておきましょう。




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まとめ


今回は海外不動産の相続について、具体的な手順やポイントを解説しました。

海外不動産の相続について、被相続人または相続人が日本に居住している場合は、基本的には日本の法律に従い相続手続きを進めます。

加えて、海外不動産には、不動産の所在地国の相続の法律が適用される場合もありますので、確認が必要です。

海外不動産の相続にあたっては、個別の状況を専門家に相談しながら、次の順番で進めます。

①遺言書の有無を確認

②不動産が所在する国の相続法も確認
※不動産の所在地国が英米法系の場合は、裁判所を交えた相続手続き(プロベート)が必要になることにも注意しましょう。

③相続人の確定後、相続税の申告
※日本での申告のほかに、現地での申告が必要になる場合があります。

④必要書類の準備

⑤海外不動産の名義変更手続き
※名義変更したら、当該不動産を売却するのか、賃貸するのか、自分で利用するのか、管理の方法を決めましょう。

⑥相続税の支払い


海外不動産の相続は、手続きそのものも、相続した不動産の管理についても、現地の事情に精通した専門家に相談するのが安心でしょう。



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(トップ画像:Unsplashのtodd kentが撮影した写真)

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