海外不動産を法人化するデメリット4つとは?個人所有との違い・注意点を解説
監修:海外不動産税務の専門家 大木宣幸
(公認会計士・税理士・宅地建物取引士)
International CPA Firms・大木国際会計事務所 代表
「海外不動産を購入して家賃収入を得たいけれど、個人で所有するのと法人で所有するのでは、どちらが有利?」
「すでに海外不動産を所有しているけれど、今から法人化するメリットはある?」
海外不動産への投資を検討している方や、すでに海外不動産を所有している方の中には、個人ではなく法人で不動産を所有することを検討している方もいるでしょう。
「法人化」とは、本来、個人事業主として事業を行っている方が、株式会社などの会社を設立して、その会社に事業を引き継ぐことを指します。
ここでは、「法人化」を広く捉え、個人が日本法人を新たに設立、あるいは既存の日本法人に海外不動産を所有させるケースを中心にお話します。
海外不動産を法人で所有すると、利益を法人内に残して再投資に活用できるなどのメリットがある一方、個人所有にはないデメリットもあります。
この記事では、日本法人が海外不動産を所有するケースで、法人化によって生じる主なデメリットを、個人所有との違いとあわせて解説します。
また、どのような人が海外不動産の法人化に向いていないのか、法人化を検討する際に注意すべきポイントについても紹介します。
最後まで読むことで、法人化に伴うコストや税負担、手続き上の注意点を理解し、ご自身の投資目的や資産状況に法人所有が適しているかを判断するための材料を得られるでしょう。
なお、海外不動産を法人で所有することのメリットについては、以下の記事で詳しく解説しています。
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1.海外不動産を法人で所有するデメリット
海外不動産を法人で所有するデメリットには以下の4つがあります。
(1)法人維持・管理コストが発生する
海外不動産を保有するために法人を設立すると、法人を維持するためにコストが発生します。
維持コストには、たとえば以下のようなものがあります。
・法人税・法人住民税・事業税などの税金
・法人の記帳・会計にかかるコスト
・決算・法人税申告のための会計士・税理士費用
・法人登記にかかる費用 など
たとえ法人が赤字であっても、法人住民税の均等割(資本金等の額や従業員数によって決定、東京都の場合はこちらを参照)は発生しますし、会計・申告のための専門家の費用も必要です。
また、法人設立登記には、株式会社で15万円~、合同会社で6万円~の登録免許税を納めます。
登記事項の変更・消滅・廃止を登記する都度、登録免許税を支払う必要があります。
(出所:国税庁「No.7191 登録免許税の税額表」)
法人を設立すると、保有する海外不動産にかかる収支を法人として記帳します。
会計期末には決算を行い、個人の確定申告とは別に法人の確定申告もしなければなりません。
これらの実務は、ご自身で行うにせよ、専門家の助けを借りるにせよ、時間と労力、お金が必要になります。
意思決定の手続きが増えることも忘れてはいけません。
個人で投資を行う場合、「自分=所有者」で自分の判断だけで完結しますが、法人の場合は、会社としての意思決定・契約・記録などの手続きが必要な場合があります。
法人が保有する海外不動産を売却して投資を終了しても、法人そのものを残すのにも維持コストがかかりますし、法人を清算するにしても清算の決定~申告まで一連の手続きが必要です。
さらに、法人に複数の株主や役員がいる場合、その手続きはより煩雑になります。
単に法人を設立すればよいというわけではなく、設立にも維持にもコストがかかることを覚えておきましょう。
(2)個人と比較して税負担が増える場合もある
海外不動産を保有する目的が値上がり益(キャピタルゲイン)の場合は、個人で保有する場合と比較して税負担が増えることもあるので注意が必要です。
法人の場合は、不動産の賃料収入(インカムゲイン)や売却・譲渡によって得られる値上がり益(キャピタルゲイン)も、同じ法人所得という枠組みで計算され、法人税が課されます(約23%、地方法人税・法人住民税・事業税を入れると30~35%)。
一方で、個人の場合、キャピタルゲインは譲渡所得として、給与所得や不動産所得とは分けて分離課税されます。
譲渡所得は、売却・譲渡が行われた年の1月1日現在での不動産の所有期間に応じて、適用される税率が変わります。
・長期譲渡所得(所有期間が5年超):所得税15.315%(*)、住民税5%
・短期譲渡所得(所有期間が5年以下):所得税30.63%(*)、住民税9%
(*)基準所得税額に2.1%を掛けて計算した復興特別所得税(2027年分以後は防衛特別所得税及び復興特別所得税)を含む
したがって、物件を長期保有して売却・譲渡しようとする場合、個人の所得税率の方が低くなります。
「海外不動産=法人化すれば節税」ではなく、インカムゲインを狙うのか、キャピタルゲインを狙うのかによって法人・個人の税負担を比較する必要があるのです。
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(3)法人と個人の資産が分離される
海外不動産を保有するために法人を設立すると、法人のお金と個人のお金を明確に分離する必要があります。
したがって、法人口座の資金を個人的に自由に使うことはできません。
法人の資金を個人的な用途に使用し、法人から役員に経済的利益が供与されたと認められる場合があります。
その供与される利益の額が毎月おおむね一定の場合は、定期同額給与として損金算入(=法人税の計算時に収益から差し引くことのできる費用や損失として認められること)できます。
しかし、その他のもの、あるいは経済的な利益が不相当に高額のものは、損金算入できません。
(出所:国税庁「No.5202 役員等に対する経済的利益」)
(4)法人→個人への資金移転時に追加的な税負担・手続きが生じる
海外不動産を保有する法人から個人へ資金を移す際に、個人側でも課税されます。
法人の保有する不動産で利益を上げても、その利益はそのまま個人の所得にはなりません。
法人は上げた利益に対して法人税を支払うことになりますが、その法人から役員報酬または配当を受け取ると、個人側でも所得税が課されることになります。
したがって、会社の資金を個人に移転し個人として使用したい場合には、法人側と個人側で二段階の課税がされることを頭に入れておくことが必要です。
2.法人所有と個人所有との違い
ここで、これまでに見た法人所有と個人所有との違いを整理してみましょう。
| 法人 | 個人 | |
| 法人維持・管理コストが発生する | あり ※設立にかかるコスト、赤字でも発生するコストあり | なし |
| 個人と比較して税負担が増える場合もある | 法人税率 実効税率30~35% | 譲渡所得にかかる税率 ・長期譲渡所得: 20.315% ・短期譲渡所得: 所得税39.63% |
| 法人と個人の資産が分離される | 〇 | ー |
| 法人→個人への資金移転時に追加的な税負担・手続きが生じる | あり ※法人側では法人税を支払い、役員報酬や配当を受け取った個人側でも所得税が発生 | ー |

